ワウ!シグナル――72秒だけ届いた、正体不明の電波
1977年の夏、ひとりの天文学者が、印字された文字の列を見て赤ペンで余白に書き込みました。「Wow!」。その信号は、二度と届いていません。
この記録の結論
- わかっていること
- 1977年8月15日の夜、ビッグイヤー望遠鏡が、背景の雑音の30倍を超える電波を約72秒間記録しました。周波数は、水素が出す電波(1420MHz付近)のすぐそばでした。
- わかっていないこと
- 何が出した電波なのかは決着していません。同じ方向をその後いくら観測しても、同じ信号はとらえられていません。
記録の概要
1977年8月15日、米国東部夏時間の午後11時16分ごろ、オハイオ州立大学の電波望遠鏡「ビッグイヤー」が、いて座の方向から強い電波をとらえました。周波数は1420.4556MHz前後。宇宙にもっとも多い水素が出す電波(1420.4056MHz)のすぐ近くです。
ビッグイヤーは、地球の自転にまかせて空を掃くように観測する望遠鏡でした。データは12秒ごとに記録され、信号が入っていたのは6回分。つまり約72秒です。
印字された「6EQUJ5」は、信号の強さを1文字ずつ表しています。いちばん強い「U」は、背景の雑音の30倍あまり。数日後(本人の記憶では、おそらく8月19日)、記録を見直していたジェリー・エーマンがこの列を赤ペンで丸く囲み、横に「Wow!」と書きました。これが名前の由来です。
二度目は来なかった
ビッグイヤーはその後、同じ高さの空を約60日にわたって観測し続け、数年後にも同じ帯を何度も探しました。信号は戻ってきませんでした。
エーマン自身は、地球外の知的生命が送った可能性を捨ててはいません。ただ、本当に知的生命の合図なら一度きりではなく何度も送るはずだ、という疑問も口にしています。30年後の報告でも、正体は自分にとってまだ答えの出ない問題だと書いています。
正体をめぐる説
2017年、当時その方向にあった彗星の水素が電波を出したという説が発表されました。けれども、彗星からこの周波数の電波が検出された例はないことなどを理由に、天文学者から反論が相次ぎました。当時のビッグイヤーの責任者も、彗星は空の位置が合わないと指摘しています。
2024年には、アベル・メンデスらが、冷たい水素ガスの雲が強い放射(たとえば磁場の強い中性子星、マグネターのフレア)を浴びて一時的に明るく光ったという仮説を論文として公開しました。こちらも、確かめられた説ではありません。
記録の仕分け
記録に残っていること
- 1977年8月15日、ビッグイヤー望遠鏡が強い電波を約72秒間記録した
- 強さは背景雑音の30倍あまりで、周波数は水素の電波のすぐ近くだった
- その後の観測で、同じ信号は一度も見つかっていない
説の部分
- 地球外の知的生命が送った合図
- 彗星の水素が出した電波(2017年)
- 水素の雲が一時的に明るく光った(2024年)
否定・未確認
- 彗星説には、彗星からこの周波数の電波が出た例がないなどの反論がある
- 水素雲説は仮説の段階
- 正体はわかっていない
よくある質問
- ワウ!シグナルは宇宙人からのメッセージだったの?
- 確かめられていません。信号は一度しか受信されておらず、発見者のエーマン自身も、本当に合図なら何度も送るはずだという疑問を述べています。
- 「6EQUJ5」はどういう意味?
- 12秒ごとの信号の強さを1文字ずつ表したものです。数字の次はアルファベットで続き、いちばん強い「U」は背景の雑音の30倍あまりにあたります。
- ワウ!シグナルはその後また受信された?
- されていません。ビッグイヤーは約60日同じ帯を観測し、数年後にも探しましたが、同じ信号は見つかっていません。